続・パール判事 ―またもや佐賀新聞より
8月31日の佐賀新聞テレビふぁいるコーナーにNHKスペシャル「パール判事は何を問いかけたのか」について掲載されていましたのでご紹介します。
東京裁判追求した秀作
戦後62年の夏。戦争関連の力作が放送される中で、現代にも通じる興味深い番組があった。
NHKスペシャル「パール判事は何を問いかけたのか」。戦後、2年半にわたって開かれた東京裁判の判決は、被告25人が全員有罪。このうち7人は絞首刑となった。
裁判を担当した判事11人のうち、インドのパール判事だけは、全員無罪を唱える独自の見解を示したことで知られる。パール判事はなぜこう主張したのか、どんな人物だったのか。東京裁判の知られざる舞台裏を追い、判決が残した課題を追究した秀作である。
番組は、判事11人のうち3人にスポットを当てる。被告の戦争責任を厳しく裁こうとする英国のパトリック判事、国際法の原則に従って共同謀議を免責とするパール判事、次第にパール判事の理解者になっていくオランダのレーリンク判事。
3人の母国に赴いて公文書を丹念に調べ、関係者の証言を克明に取材。立場の違いや判決に至るまでの生々しい人間模様を明らかにしていく。
この種の番組は役者を使って安易に再現シーンを使うことが多いが、ここではあえて使わず、現存する資料や写真、当事者の肉声テープなどに限定。つまり過度の演出を抑制することで、歴史を客観的に検証しようとする意図が示されている。
戦争犯罪といえば、近年では旧ユーゴのミロシェビッチ裁判、イラクのフセイン裁判などが記憶に新しいが、公判中の被告人の病死や判決直後の死刑執行により、司法の場で戦争の真相究明が十分に行われていないという指摘もある。
東京裁判の判決までのプロセスは、あまり知られることはなかった。パール判事の思想の軌跡を通して、戦後史の空白部分に光を当てた番組は、現代の戦争犯罪を裁く司法制度そのものにも大きな問いを投げかけている。(今村庸一 駿河台大教授)
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)


最近のコメント